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ORGANIC COTTON

「初めてコットンの生地を触って感動した。
 これが本当の自然のパワーの素晴らしさなんだって。」

THE INOUE BORTHERS... 2019 S/S with organic cotton.

年に数回、井上兄弟は必ず福岡を訪れ、商品の話からアルパカや南米の暮らし、音楽や旅などたくさんの話を聞かせてくれる。
今回は兄弟が南米で出会った100%自然栽培されたオーガニックピマコットンのストーリーを伺った。

一度アルパカのサマーニットを作ってみたんだけど、めっちゃダサくて全然ダメで。
これは誰にも見せられないなって(笑)。

僕たちは、ファッションをやりたくてブランドを始めたんではなく、元々2004年にイノウエブラザーズアートスタジオ、ソーシャルデザインっていうコンセプトで、社会貢献をしながらデザインをやって行こうって始めたんだ。
デンマーク・コペンハーゲン大学の博士に招待されてアンデスに行って、アルパカと一緒に生きている、共存している先住民たちに出会い一目惚れして。
じゃあアルパカだったらニットブランドをやるしかないと思ってニットブランドになったんだ。ニットっていうとやっぱり寒い時に着るものだから、もちろん秋冬の商品を中心にずっとやってきた。
春夏商品に関しては、僕たちのことを応援してくれている取引先にアドバイスを受けながら、何を提案しようか色々悩んでて。一度アルパカのサマーニットを作ってみたんだけど、めっちゃダサくて全然ダメで。これは誰にも見せられないなって(笑)。
その次にやっぱり春夏だったら、アルパカじゃなくてコットンっと思ってサンプルを作ってみたんだけど、ほとんどのコットンニットって最初買う時にはかっこいいんだけど、着ていくとどんどん伸びちゃう。
コットンニットってある程度の伸びはしょうがないけど、どんどんテンションが下がってくものを紹介するのも嫌だなと思って。
コットンの事を色々調べていくと、世界中の生地としてのスタンダードになってるんだけど、コットンは元々生地としては決して適切な素材ではないって思ったんだ。
面積から考えると日本は麻とか、バンブー(竹)の方が優秀な素材。バンブーとか麻は縦に伸びるから、 本当に小さな面積でも沢山の生地ができる。
そういう面から見ると、麻の方が、全然優秀な素材。やっぱりコットンはどうかな?とも思ってて。
掘り下げていくと、広い面積で少ししか取れないから、肉体労働としてめちゃくちゃ大変な作業が必要。
だから今まで世界の素材のスタンダードがコットンになった理由って奴隷の様に労働者を扱える国がメインになったからグローバルスタンダードになってるんだと思う。自分たちがやりたくない仕事をやらせないと素材としては扱えない、使えないってわかってきた。

もう一つ、化学肥料と農薬の問題。
コットン生産の裏側って、今大量生産されているから、化学肥料と農薬をめちゃくちゃ使わないと育てることができない植物。
それはなぜかというと、大量生産しすぎているし、化学肥料と農薬をたくさん使うと、コットンが生きてる土まで弱くなる。
土っていうのは、化学肥料と農薬をずっと与えると弱くなるから、普通土っていうものは肥料っていうか、エネルギーっていうものを吸収するパワーがあるんだけど、 ずっと薬を与えているからその力をなくし、畑から川に流れていって、川から今度海に流れる。その次は魚介。 魚とかが病気になってそれを僕達が食べているから、なんちゅうのかな、、、環境問題から社会問題にもなってる。それがコットンの、僕達にとっての気になる部分だった。

僕は今日もコットンを着てるし、コットンの商品を散々持っている。「コットン=悪」とかではなく必需品だとも思う。
でも、わざわざ僕たちもその中で服を作る必要はないんじゃないのかなって。

僕たちが提案できる春夏商品は無理かな?と諦めかけてた時、
アマゾンジャングルの原生林で自然栽培されている素晴らしいコットンを見つけた。

なぜ農薬が必要なのか、それはまず虫に弱いから。自然体のコットンっていうものは虫に弱いから農薬をかけまくっている。でもジャングルの中のコットンっていうのは、コットンが大好きな虫もいるんだけど、その虫が大嫌いな花がちゃんと横に生えている。その生えている花があるからこそ虫がコットンに寄ってこない。そしてその花が大好きなヤギがいるんですよ、その花に群がったヤギのフンがそのコットンの一番適切な肥料となる。自然の共存のバランスとパワーがそのまんま、成り立ってる。

僕達のルーツは日本で、日本の食文化っていうのは素材の良さを一番理解している気がする。
やはり美味しいものは、美味しい食材でないといけない。美味しい食材はケミカルで作ったものではなく、やっぱり自然に一番近いものでないといけないと思う。
日本人にとって当たり前みたいなことで、決して新しい考え方でもないし一番古臭い考え方かもしれない。
そして、服の素材も一緒だと思った。

アンデスに行き始めて気づいたこと

自然体になっているコットンを見つけて、アンデスに行き始めて気づいたことがあって。
アンデスはインカ帝国と直接つながっていて、当時の人達は寒い時にはアルパカを着てたんですよ。
暑い時には、コットンを着て、でもそのコットンは畑じゃなく、ジャングルの中で、自然で見つけたコットンだったんですよ。
それを製品化している方達が今でも残っていて、やっと出会えて、THE INOUE BROTHERS…の春夏の商品っていうか、俺たちはコレクションじゃなくてプロジェクトって言ってるんですけど、春夏のプロジェクトを今回紹介できて、そのコットンを見るとさっきの食材との話と同じなんですけど、コットンの生地を触って初めて感動して。
光沢感もシルクが入ってるんじゃないかと思うくらいキラキラ光って見えて。これが、本当の自然のパワーの素晴らしさなんだなって。それがあったからこそ、ずーっと何千年前にインカの人たちがそれを見て、これは生地が作れるんではないかと初めて思ったと思うんですよ。

このプロジェクトをみんなに体験してほしい。

アルパカと同じで、僕達がデザイナーとして、ファッション業界で一番嫌いなのは、デザイナーが主人公になること。
デザイナーっていうのは、素材を生かせるっていう、ある意味アシスタントみたいな役目だと思うんだ。シェフに例えると、食材をうまく活かすのがシェフの役目だし、僕はデザイナーとして、素材をみんな に体験してもらうことが役目だと思うし、それは背景のストーリーとかを知らなくても、食べた瞬間、着た瞬間、「うまい!」「気持ちいい!」それだけで十分だと思う。
今回のコットンはアルパカと同じくらい中毒性があり、一回着たらもう他のものは着れなくなっちゃう。危ない素材なの(笑)。
100%自然栽培されたオーガニックピマコットンのプロジェクトをみんなが体験してくれたら嬉しいと思う。
ありがとう。

(2018年12月福岡「小料理や ぐりこ」にて)

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