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DESIGNER INTERVIEW

  1. Dice&Dice(以下D):Tomo&Co.には、小野崎さんの体験や仲間との関わり合いの中から生まれた商品があります。 尊敬する料理人の方々に捧げたというタッセルコックシューズ。 この靴が生れたきっかけをお聞かせいただけますか?

    小野崎朋孝(以下O):10年くらい前に「すげぇやばいピザ屋があるから沖縄行こう」って言われて。 ピザって割と身近で、わざわざ飛行機に乗って行くのかな、みたいな感じだったんですけど。 実際に行ってみたら凄く美味しい、だけではなくて、スタイルが格好良くて。 飲食店のそれまでの概念というか、そういうのが全て吹き飛んで、仲村さん(BACARオーナー)自体が凄く格好いいし、当時のスタッフのみんなも凄く格好良くて。 大人になってくると格好いい飲食店さんって会う機会ってどんどん増えてくるじゃないですか。 それで、コックシューズをそういう人たちに履いてもらいたくて作ったという感じですかね。

  2. D:その時格好良かった、具体的なエピソードはありますか?

    O:具体的に格好良かったエピソードですか? それってその人が持っているモノだから、何がどうして格好いいって言いづらくないですか?

  3. D:そうですね。 雰囲気というかオーラが格好良いということですかね?

    O:凄く簡単に言うとオーラですけどね。 店内に飾ってあるポスター1つだったり、料理をサーブする時の所作だったり、全てって感じですね。 働いている時間だけ格好つけている人にはできない感じというか。 そういうのが凄く衝撃でした。

  4. D:そういう人に履いてもらいたいということですね。

    O:そうですね。 なのでこのコックシューズだけ、他のレザーと違ってガラスコーティングされています。 多少の水仕事は水を弾くレザーを使っていたり。 あと、立ち仕事が長いので、VibramのNEWFLEXというEVAで作られているソールを使っているんですけど、長時間の立ち仕事でも疲れなかったり。 あと、タッセルが付いていると思うんですけど、これってコックシューズとしてはいらないディテールなんですが、僕の中では料理人の方々は営業時間が一番輝いているというか、晴れの時間だと思うので、あえて飾りをつけて作りました。

  5. D:調理場がステージというような感じ?

    O:みたいだったり。 サーブする人はホールがステージだったり。 コックシューズとして作っているんですけど。 立ち仕事で疲れないっていうので、美容師さんにも凄く人気があるらしくて。 名前変えようかなと思って。 冗談ですけど(笑) そういうのいらない?(笑)

  6. D:(笑)

  7. D:一見ビニール紐に見えるDyneema素材を使って、クラシックなモカシンを縫ったDyneema Moccasinですが。 この商品の説明には「inspired by Satoshi Ezaki」とED ROBERT JUDSONデザイナー江崎賢さんの名前がクレジットされていました。 この靴が生れるにあたっての経緯や、江崎さんとのエピソードなど教えてください。

    O:それこそ江崎君と初めて会ったのは、吉田さん(Dice&Diceディレクター)に新井薬師のアトリエに連れて行ってもらったのがきっかけで、そこから飲み友達というか、遊ぶようになって。 ただ酒飲んでたりとかしてただけなんですけど。 『ON AIR』のズマーフ君と3人で、事務所飲みみたいな感じで、アトリエで飲んだりとかするようになって。

    これは僕が勝手に感動していたんですけど。 中年になって、好きなアートだったり、音楽だったり、ああでもないこうでもないって、大学生の時みたいにアトリエで話したりとかして。 そういうのよくないですか? だんだん大喜利みたいになっていったりするんですよ。

    江崎君のアトリエにDyneemaがいっぱいあったので「次来る時にこのDyneemaをもとになんか作ってくるわ」って言って、このモカシンを持っていったんですよ。 大喜利的な感じで。 そしたら、みんなが「めっちゃいい」って言ってくれて。

    今の時代ってコラボレーションって割と仰々しいというか。 ブランド間でそんな感じでやるじゃないですか? でもこれは事務所飲みの大喜利で生まれているモノだから、コラボレーションとして打ち出すのは違うかもねみたいな。

    ビニール紐みたいな、パッと見ふざけているコレも、ピアノ線よりも強度があって、モカ縫いするのに実は理にかなっているじゃないですか。 だから凄く気に入ってて。 このモカ縫いをDyneemaでやるっていうのを、自分だけの手柄にするのも違うかなっていうので。 それで「inspired by Satoshi Ezaki」っていうふうにクレジットしています。

  8. D:なるほど、そういう経緯があったんですね。 ちなみに、それぞれみなさんもアイディアを持ち寄ってきたんですか?

    O:ズマ君はその時、白鞣っていうレザーで雑巾作っていたり。 とにかく、そういう大喜利を開催していましたね。 それが凄い良くて、いきなりハタチになった気分になりましたね。 意味わかんないですよね?(笑) いきなりハタチって言われても(笑)

  9. D:(笑)

  10. D:2022 SSシーズンのルックブックは、いままでと全く違う見せ方をされていました。 撮影を担当されたのは、先ほどお話にも出てきた、アーティストのKazuma Ogata(ズマーフ)さんだと伺いました。 ズマーフさんに撮影を依頼した理由や、撮影現場での印象的な出来事など教えていただけますか?

    O:多分みんなより僕は靴をただのモノとしてではなくて、立体物として見ているとおもうんですよね。 EVAのジャーマントレーナーだったり、ああいうちょっとふざけた企画みたいなのは、コラージュを作る感覚なんですよ。 コレ(Dyneema Moccasin)もそうですけど、履きやすいメンズの靴の他に、おふざけしている側面もあるじゃないですか? そういうのは僕の中では立体的なコラージュ「ブリコラージュ」っていう解釈でやっていて。

    ズマ君の作品って立体的なコラージュじゃないですか。 『ON AIR』の他の2人は平面だけど、ズマ君は立体作品。 だからこの人に撮ってもらったら面白いかもと思ってお願いしました。 「ズマ君に仕事をお願いしても、なかなか仕事を受けてくれない」っていう話はいろんな人から聞いていたんですけど、快諾してくれて、やってもらえることになったっていう感じですね。

    撮影の時は、ズマ君のアトリエにある、興味ない人から見たら“世界各国の数々のガラクタ”。 それをもとに写真を撮っていくんですけど。 コレをこうしたらちょっとお洒落な感じになる。 みたいなことは絶対にしなくて。 「コレやったらちょっとダメっすね」「あざといっすね」みたいな。

    でも靴とか洋服とかって、お客様はお洒落したくて買うわけじゃないですか。 「コレやったらちょっとあざとい」とか、真逆の方に振っていく感じが「どうなるんだろう」と思いながらも、でも凄い楽しかったっていう感じですね。 そして実際に展示会やって、いろんなスタイリストさんとか来られるじゃないですか。 そしたら「誰がやったのって?」みんなに聞かれましたね。

  11. D:小野崎さんも仕上がりは驚かれました?

    O:びっくりしましたね。 展示会までにZINEにしてくれて。 これかっこいいですよね? 例えば、来期REGALさんとのコラボレーションでブリックカラーのコンビに、ブリックカラーのシャークソールのデザインがあるんですけど。 それをトイレのスッポンでやるとか。 凄いなっていう感じです。

  12. D:Tomo&Co.の商品は、クラシックなレザーシューズの持つ堅牢さがありつつも、一方でスニーカーを履き慣れた方でも手に取りやすい親しみやすさを感じます。 Tomo&Co.のシューズの造りの良さ、こだわりの点などについてお聞かせいただけますか?

    O:長くやっていると、色々な出会いがあって、色々な革屋さんから革を買えるようなるじゃないですか。 デザインによって、革を変えたりができるというか。 効率的に考えると、コックシューズとグルカサンダルも、黒だったら基本的に同じ革を使うと思うんですけど、コックシューズにはこの革で、グルカサンダルにはこの革でとか、そういうことができるようになって。

    グルカサンダルはなんでこの革にしたかというと、グルカサンダルって裸足で履く可能性があるじゃないですか。 こう見えて100%植物のタンニンで鞣されているレザーを使っていて。 足に優しいと言ったら気持ち悪いけど。 そんな感じでアッパーのデザインによって、革を変えたりしているんです。

    あとは、多分有名紳士靴メーカーは、基本スーツに合うように、もっと細い木型で作ってたりとかすると思うんですけど、僕スニーカー作っているのでその延長で、ウチの靴って割とワイズ広いじゃないですか。 僕の足が幅広だっていうのもあるんですけど。 多分その木型のせいもあると思います。 ドレスドレスしていない木型。

    なので、さっきまでジーパンにスニーカー履いていた人が、ウチのレザーシューズに履き替えても、そんなに違和感ないっていうのは、そういう理由だと思います。 僕スーツ着ていないので。

    ソールは前シーズンから使っているんですけど、このEVAのVibram社のNEWFLEXソール。 コレが軽くて、クッション性があって、それこそDice&Diceのスタッフの方がみんな履いてくれてて。 履きやすくないですか? 立ち仕事。

    あと次からこのグルカサンダルもフットベッドにウレタン入れているので、今までのグルカサンダルより疲れないというか。 この疲れないっていうのを凄い意識し始めたのは、吉田さんがいっつも「足が痛え足が痛え」って言ってるから(笑) ウチの靴履いて、遠回しにディスられてんのかなと思って(笑) ていうので、そういうところを汲んでやってます(笑)

  13. D:ウチのディレクター足腰が弱いんです(笑)

  14. D:小野崎さんはTomo&Co.のデザイナーであり、またAloha Blossomのデザインも手掛けられています。 Aloha Blossomのこれからの展望を、可能な範囲で構いませんので教えていただけませんか?

    O:「こうなっていくよ」みたいな、大それたことは変わらず無いんですけど。 近しい友達と、それこそDice&Diceで沖縄展やるとか、そういうのは変わらずやっていくんですけど。 ちょっと変わったなっていうか、10年やって来年11年目じゃないですか。 それでキヨサクとも、10年前に出した時のデザインと、今のデザインって、やっぱり僕らの10年間の経験とか環境とかで、好きなものって違ってくるじゃないですか。 なんかそれが、11年目だって感じがするね。 みたいな話をこの間キヨサクとしてて。

    基本的に洋服のブランドって、10年前の洋服を11年目にもう一度出すってしないじゃないですか。 でも僕ら基本的に廃盤がないんですよね。 それってすごいミュージシャン的感覚というか、10年前の曲も普通にCD店には並んでるし。 洋服屋の感覚だと10年前のデザインってちょっと恥ずかしいって思うんですけど。 僕らが今見ても、ちょっと若いなって思うデザインもあったりするんですけど、そこも包み隠さず作品みたいなのがあって、面白いなっていう。 他人事みたいに言ってますけど(笑)

    今まで反物で生地にプリントして、それを縫製してシャツに仕上げてたんですけど。 これもまたDice&Diceの話になっちゃうんですけど、去年の沖縄展で発売した、真っ白のシャツを作って、然るべき職人さんに真っ黒に黒染めをしてもらったアロハがあるじゃないですか。 あれが凄く僕も勉強になって、製品染めで表現するハワイアンっていうのも、面白いなと思って。 なので次は手拭いの注染という染め方で、タイダイ染め風な柄を考えたりしてます。