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Aloha Blossom 手捺染工場

Aloha Blossom

INTERVIEW | Aloha Blossom 手捺染工場

Aloha Blossomの鮮やかな柄を映し出す「手捺染」という伝統の染色技法。手作業で幾重にも版を重ね色彩を表現する職人の技を取材しました。

  1. Aloha Blossomのアロハシャツの生地が出来上がるまでの工程を教えてください。

    お客さんから発注をいただくと、まず「調色」をします。それから「色塗り」をして「捺染(なっせん)」「蒸し」「水洗」「整理」「検反」「出荷」という工程で進みます。

  2. 「水洗」の作業は一般的に外注されることが多い工程ですが、こちらの工場ではそれを自社でされているというのが特色と聞いています。なぜ自社での「水洗」にこだわるのでしょうか?

    「水洗」まで自社で一貫して作業することによって、トラブルを軽減することができます。また、もしトラブルがあった場合でも原因追及が即座にできるというメリットがあるんです。それによってコストも少し上がってしまうのは事実なのですが、自分の工場の商品だけを扱うので、全てのことを丁寧に作業することができます。結果的に高品質なものに仕上がるんです。発色や堅牢度、着心地や風合いなど、そういった肝心なところが「蒸し」と「水洗」によって決まるので、そこを重点的に丁寧にやっています。

    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
  3. Aloha Blossomのアロハシャツの生地は、他社のものと比べとてもしなやかに感じます。その理由は自社水洗によるものだと思いますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

    とにかく丁寧にやるということです。あとはよく糊を落とす、そしてやっぱり極力熱を加え過ぎないことですかね。熱によって柔軟剤の成分が結構飛んでしまうので、それをいかに飛ばさないようにしつつ、シワを伸ばしたり、正確にピッチを出したりする工程を踏んでいくかということが大切ですね。それによって生地の風合いが生きてきます。

  4. 捺染に使用されている機械や道具と、手入れ方法について教えてください。

    これは捺染台です。基本的には一面で一反なので25mぐらいの長さです。下に鉄板が入っていて電気で熱を加えて加工しています。大きい柄は乾きが悪いので40度ぐらいでいいのですが、例えば糸目のような細かい柄や点描の柄などは、熱が高いとプリントしている間に柄が小さくなってしまうので、そういう時は35度とかに熱を調整しています。

    使っていくうちに板もガタガタになるので、半年に1回ぐらいで手入れが必要です。上につけているフィルムを全部剥がして、研磨して、そしてまたフィルムを貼ってという感じです。捺染はアナログなので機械らしい機械は使っていません。唯一の機械はグランドの色を扱(しご)く「扱き機」くらいですね。

    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
  5. 手捺染の職人になられたきっかけを教えてください。

    きっかけは親がやっていたからですね。高校を卒業して工場に入ったんですけど、最初は学生気分が抜けなくて何が何だかわからない状態でした。最初はプリントする方の現場にいたんですけど、そのあと色を作る方に移っていきました。ちょっと性格的に凝り性なところがあるので、試験場に入っていろんなことを試験していく方が向いていたという感じはしますね。

  6. 凝り性な性格はどのように仕事に影響していますか?

    例えば、お客さんが他社で断られたものをうちに持って来たとき、うちも普通にやるとできないんですけど、凝り性というか、しつこいというか、そういう性格なので、失敗を繰り返してしつこくやることで、技術が上がりできるようになるんです。そうやっていろいろと工夫を重ねて、今日に至るという感じですね。

    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
  7. 作業工程の中で特に気をつけているところがあれば教えてください。

    色糊をつくる時、あと蒸しと水洗の工程は失敗すると全て不良反になってしまうので特に気を付けます。

  8. 水洗の方法について教えてください。

    生地を洗う機械はだいたい2種類あって。生地を広げたまま洗浄する「オープンソーパー」という機械と、生地を輪っかにして回転させて洗浄する「ウィンス」という機械があります。オープンソーパーは生地をミシンで繋げば、自動で1日に何千メートルも洗浄できるメリットと、シワにすると問題が出る素材を広げて洗えるメリットがあります。

    それに対してうちで使っているウィンスは、輪っかになった生地を手作業で掛けていくので、時間も手間も段違いにかかります。しかしオープンソーパーはその都度生地を絞って潰されていくので風合いは出にくいんですが、ウィンスは回ることによって生地が揉まれるので、糊を落とす力も強く、ふっくらとしなやかな仕上がりになります。特にレーヨンや綿などの反応染料で染めるものはウィンスで洗うのがやっぱり効果的ですね。

    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
  9. 作業の中で楽しみに感じる場面はありますか?

    お客さんから新しい要望を受けて、その要望に応えようと模索しながら取り組んで、最初は失敗を繰り返すんですけど、その中で成功の兆しが見えた瞬間が、やっぱり一番楽しみを感じますね。

  10. 苦労する場面はありますか?

    最初に見本を作ってそれから本番という工程を踏んでいくんですが、外気温だったり湿度だったりいろんな要因で再現性がぶれてしまう、不安定な部分がどうしてもこの仕事にはあって、そこが一番苦労するところですね。素材が変わると糊の硬さや刷り方、蒸しの温度や湿度なども微妙に変わってきて、どうしてもそのちょっとした感覚の部分が残るので、マニュアル作って誰かに任せるということができないんです。

    Aloha Blossom 手捺染工場 沖縄展2023
  11. こちらの工場はいつ頃設立されたのでしょうか? 設立時の思い出などもあれば教えてください。

    この場所には、1991年の10月、私がちょうど高校を出た頃に来ました。横浜は昔、シルクスカーフの産地として捺染が地場産業だったので、私の親から聞いた話では、100社以上の捺染工場があったそうです。もともと捺染工場は川沿いにあって、大昔は川で生地を洗ったという話もあるんですけど、もうそういうわけにはいかないので、横浜市が埋め立ててつくったこの工業地帯に捺染工場が誘致されました。当時この地域には6社から7社ぐらいあったんですが、年々少なくなり、近頃はうちともう1社で頑張ってたんですけど、もう1社も去年廃業されて、この地域ではうちが最後の1社となってしまいました。

「技を重ねる」Aloha Blossomの手捺染