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吉田雄一(Dice&Dice):沖縄展って今年で4回目になるんですけど、そもそもはAloha Blossomさんとの催事が始まりでしたよね?
小野崎朋孝(Aloha blossom):そうですね。 僕が話すとなんか他人事みたいな感じになっちゃうんですけど(笑)。 『Aloha blossom』って、ただレーヨン素材の開襟シャツを売るというか、単なるアパレルメーカーっていうわけではなくて。 「沖縄の魅力」だったり「夏」を売るっていうマインドでずっとやっていて。 沖縄展が始まる前から、そんな感じでずっとダイスさんでポップアップやらせてもらっていたんです。
ポップアップをさせてもらう中で、普通にアロハシャツだけを売っていくっていうんじゃなくて、何か違うアプローチで、もっと「沖縄の魅力」とか「夏」っていうのを伝えられないかなって思って。 そこで、ダメ元で忍くん(みんげい おくむら)に相談したっていうが、沖縄展が始まるきっかけですかね。 『みんげい おくむら』が、いろんな催事をお断りしてるのは知ってたから、ほんとダメ元で。
奥村忍(みんげい おくむら):その時、話をもらって。 最初は、福岡は工芸を売っているお店が結構あるから「どうかなぁ……」っていうのは正直あったんだけど。 ダイスのことは元々知っていて、なんとなく「全然違うお客さん来るんだろうな」っていうのがイメージできたから「面白そうだしいいかな」という感じだったかな。 「何を持っていくか」とか「どのぐらい持っていくか」とかは全然わからなかったけど、でもまあノリで(笑)。
吉田:初め『沖縄展』っていう名前は決まってなかったですよね? もともと毎年Aloha Blossomさんとは、「沖縄の夏を届ける」っていう感じのポップアップで、小野崎さんとキヨサクさんチームに来ていただいていて。 その延長で、小野崎さんに「奥村さんっていう民藝をセレクトされている面白い方がいる」って話を聞いて。 正直、僕たちは民藝とか焼き物とか、専門ではないし、あまりよくわからなかったんですけど、商品見せていただいたらすごく良くて。 というか、とにかく奥村さんと仲良くなりましたね(笑)。
奥村:最初の頃って、陽介さん(ORRS)はまだ参加してなかったですよね?
佐藤陽介(ORRS):一番最初に参加したのは、オンライン開催の2020年ですね。 初め沖縄展は見てた側なので。
奥村:そっかそっか。 一番最初はおさむちゃん※1の紅型とかだっけ?
小野崎:おさむちゃんの紅型と、忍くんのセレクト。
吉田:シンデレラ※2のサンピン杯。
一同:ああー、そうだ!
吉田:陽介さんのパナマハットを、ダイスで取り扱わせていただくようになったのも、沖縄展からではないですもんね?
陽介:違いましたね。
吉田:沖縄展とは別で、小野崎さんから「やばいパナマハットをやっている、陽介さんという方がいるよ」と教えてもらって。
陽介:そうですね。 でその後に、沖縄展にも声かけていただいて、一緒にやらせていただくようになりましたね。 その時は帽子だけだったんですけど、そこから陶器も増えてという流れですね。
吉田:奥村さんも陽介さんも小野崎さんが紹介してくださったんですよ。
奥村:陽介さんが参加して、バチッと『沖縄展』っていうのがハマった感がありますよね。
吉田:そうですね。 そういう皆さんの繋がりがあって「だったらこれは自分たちなりの『沖縄展』じゃないのか?」というので、『沖縄展』っていうタイトルが出てきた感じですよね。
始めた頃は沖縄行ったことなかったんですけど、沖縄展チームを通じて年に何度かプライベートでも行くようになって。 その中で、陽介さんとかケンタさん※3とか仲村さん※4とか、タツヤさん※5とか、皆さんと出会って。 皆さん優しくて、ムードがすごいカッコよくて大好きになりましたね。 そう思えるのも、それを中心でまとめて下さっている、Aloha Blossomのキヨサクさん、小野崎さんあってのことなんですけど。 ほんといい形になってますよね、沖縄展。
※1おさむちゃん:沖縄伝統の型染め「紅型」の工房『加治工紅型』の加治工摂(かじくおさむ)さん。
※2シンデレラ:名物マスターひさしさんが営む、那覇市牧志にあるBAR『Drunk CINDERELLA』
※3ケンタさん:宜野湾の家具屋通りでタトゥースタジオ『W-OKI TATTOO』を主宰するタトゥーアーティストKENTAさん。
※4仲村さん:那覇市久茂地でレストラン『BACAR』を営む仲村大輔(なかむらだいすけ)さん。
※5タツヤさん:北谷町浜川でカフェ『GOOD DAY COFFEE』を営む宮里達也(みやざとたつや)さん。
吉田:去年は「ブラックのパンツにブラックのシャツ。 そこにナチュラルカラーのパナマハットを被りたい」という、漠然としたコーディネートのイメージがあったので、小野崎さんに「ブラックのシャツが作りたいんですけど」と相談して、京都の『馬場染工業※6』の黒染めのアロハをやらせていただきました。
それから陽介さんに「ORRSが表現するブラックのパンツがほしい」と相談して、陽介さんらしい素敵なブラックデニムを制作していただき、オールブラックにパナマハットのコーディネートを実現することができました。
じゃあ今年は?と考えた時に、「ネイビー上下にパナマハット、足元はレザーサンダル」というイメージがあって、小野崎さんに「今年はオールネイビーのコーディネートをしたいんですけど」と相談したら、「岡山の児島で染められている『注染』という染めの生地を、Aloha Blossomのインラインで取り組んでいるから、その染めを生かしたネイビーはどうだろうか」と言ってもらえたのが、ダイス別注のネイビーとパープルで染め上げた「注染」の始まりでした。
小野崎:ほんと、めちゃくちゃサンプル作りましたよね? なかなか求めていたネイビーが出なくて。
吉田:大変でしたね(笑)。
小野崎:「注染」って江戸時代とか明治時代からある技法なんですけど、本当は手ぬぐいを染める時に使われたりする染めなので、パキッとした柄になるのが特徴なんです。 だけど、Aloha Blossomでやっている「注染」は、タイダイみたいに「まだら模様」じゃないですか。 あれはあえてそうになるように工夫してやっているんです。 タイダイは生地を縛って柄をつくるから、どうしても白い線が入るんですけど、「注染」だと縛らないから白い線が入らないんです。
吉田:そうですよね。 小野崎さんに同行させてもらって、染工所まで実際に染めているところを見に行かせてもらったんですけど。 注染って、生地に糊で線を描いて、その間に染料を注いで、その後糊を洗い落す、という工程で柄を表現するので、結構ハッキリとした柄が多いんですよね。
でも、Aloha Blossomの「注染」は、タイダイっぽいけどタイダイじゃないような「まだら模様」で、あえて生地にシワを寄せて、そこに染料を注いで模様を作ってる。 そういう工夫が面白かったですね。
※6馬場染工業:京都で140年以上続く老舗の黒染屋。 昨年のAloha Blossomダイス別注「PURE BLACK」の黒染めを依頼した。
吉田:去年の11月頭、宜野湾での『What a Small World!!2021』にAloha Blossomさんの撮影のお手伝いで行かせてもらった時、MIGHTY CROWN※7のMASTA SIMONさんとSAMI-TさんがORRS別注のアロハシャツを着られていて、「うわ~カッコ良い」と思ってたんですよ。 その時、ちょうど小野崎さんと陽介さんが隣にいたので、勢いで「沖縄展の時に、あのベージュシリーズやりませんか?」とご相談してみたんです。
小野崎:ORRSは基本卸売りをしていない中、全国で唯一ORRSとAloha Blossomを両方を取り扱っているダイスさんで、ORRS柄の別注カラーをやるっていうのは文脈的にも良いなと思いました。
吉田:陽介さんも快く「良いですよ」と言って下さって。
陽介:嬉しかったです。 あのシャツは本当にともくん(小野崎さん)と喧嘩になるくらい細かくデザインさせてもらったので。 右身頃と左身頃の柄を反転にしていて、めちゃくちゃ造りが難しいんですよ。 背中も襟も腕も左右対称で、二つの胸ポケットも全て柄を合わせるという、途方もなく大変な仕様を、ともくんが引き受けてくれたのも嬉しかったですね。
※7 MIGHTY CROWN:日本代表のみならず世界のレゲエアンバサダー/カルチャーアイコンとして活躍するレゲエサウンド。 30周年を機に活動休止を発表。 ファイナルステージとして世界最大級の豪華客船によるミュージッククルーズ『FAR EAST RAGGAE CRUISE』を2022年9月17日~9月22日に予定している。
小野崎:10年ぐらい前、忍くん(奥村さん)に誘ってもらって、『かまわぬ※8』さんという手ぬぐいの専門店の浅草のオープニングに連れて行ってもらったことがあって。 その時からずっと素敵だなって思ってたんですよ。 「鎌」と「〇(輪)」の図柄と平仮名の「ぬ」という、なんだかよくわからないデザインがずっと印象に残っていて。
奥村:このデザインは、日本語の「構わぬ」の語呂合わせが由来の文様で、「物事にこだわらない」っていう江戸町民の気っ風の良さとか、「何もお構いできませんで」っていう商人の心意気をあらわしてるんですよ。 江戸時代から一般的に使われてきたデザインなので、それを『かまわぬ』さんはお店のロゴにしてるんです。
小野崎:江戸の火消しは「鎌〇ぬ」を、法被の内側に手で刺繍してたりしたんだよね?
奥村:そうそう。
小野崎:それからずっと「鎌〇ぬ」のデザインが気になってて、いつかアロハにしたいと思ってたんです。 「鎌〇ぬ」自体は商標の無い一般的なデザインなので、自分たちでつくることもできるんですけど、やっぱり切っ掛けになった『かまわぬ』さんと、ちゃんと一緒にやりたいなと思って、忍くんに紹介してもらって、コラボレーションしてもらえることになったんです。
奥村:「かまわぬ」さんにもいろいろデザインがあるから、てっきりもっとアロハっぽい柄を選ぶのかなと思ってたけど、ともちゃんから「『鎌〇ぬ』柄でやりたい」って聞いて、意外にもド直球だったからびっくりした。
小野崎:なんとなく浴衣っぽく着れるアロハになればと思って(笑)。
奥村:確かに。
吉田:サンプル見せて頂いたんですけど、すごく良かったです。 そして奥村さんがすごく似合いそう。
小野崎:それキヨサクも言ってました(笑)。
奥村:キヨサクくんも似合いそうだけどね(笑)。 風呂上がりの浴衣っぽい感じで。
吉田:Aloha Blossomさんのシャツって、形はほとんど一緒なんですけど、柄によって表情が全然違って感じるので、本当に面白いですよね。
※8かまわぬ:日本の伝統文化に基づき、古典からモダンな柄まで400種を超える手ぬぐいや和雑貨を揃える専門店。
陽介:去年の沖縄展の時でしたよね? 吉田さんから「オールネイビーのコーディネートしたくて……。 涼しくて、楽で。 でもお洒落してBACARに行けそうなパンツが欲しいんですけど、来年できませんか?」とお話しを頂いて。
吉田:そうでしたね。
陽介:それから、僕なりに色々と考えて。 ORRSの定番シャツって、涼しくて洗濯してもシワになりにくいレーヨン×ポリエステルの生地を使っているんですけど。 その素材がすごく良いので、今回のセーリングパンツでも、ほとんど同じ生地を使用することにしました。 でも今回はパンツなので、少しだけ混率を変えてシャツより強度が出るようにしています。
アイロンを当てなくてもシワがのびる素材だったり、ウエストはロープで縛る仕様になっているので、空港でベルトを外さなくてよかったり、旅先なんかでも楽に過ごせるように工夫しています。 センターにはピンタックを入れているので、プレスしなくてもセンタークリースが消えないようになっていて、ラフに履いても上品さを保てるように意識しました。
吉田:先日ちょうど商品が入荷したんですけど、履いてみると本当に涼しくて楽で、そして想像以上の「上品さ」を纏ったパンツで、すごく良かったです。 福岡も暖かくなってきたので、すでに店頭に出しているのですけど、スタッフにもお客様にも人気で、沖縄展まで残っているかどうか……(笑)。
陽介:実はORRSではあのパンツもう無くなってしまって......。 こんなにも早く完売するとは思ってなかったので、再生産しています。 7月の東京で開催する沖縄展には間に合うと思います。
陽介:ORRS POTTERYのスタートは「青」だったんです。 原点回帰じゃないですけど、今回の沖縄展には、最初の頃に出していた「青」で焼いています。 奥村さんも焼き物をセレクトされているので、僕は普段使いのものというより、置物だったり、花瓶だったり、アートワークに近いものを多く持っていく予定です。
あと、こういうご時世なので、みんなでお家で食事したりする機会が多いじゃないですか? なので、いくつか大皿も用意しています。 大皿は乾燥の時に割れたりするリスクが高いので、4枚作ってやっと1枚上手くできるぐらい、作るのが大変なんですけど、今回は積極的に難しい作品にもトライしました。
そして、今回も沖縄展では『GOOD DAY COFFEE』のタツヤくんがコーヒーを淹れてくれるので、ドリッパーとかコーヒー豆を入れる器も作っています。
小野崎:達也くんが沖縄展にいてくれると、めっちゃ沖縄感出るよね?
陽介:ひと息つけますよね、お客さんも俺らも(笑)。
奥村:去年の沖縄展は焼物(やちむん)が間に合わず出せなかったので、今年は出せたらいいなと思っていたんです。 なんとか間に合いそうなので、読谷山焼・北窯の松田米司工房のものを持っていく予定です。
沖縄展はあまり堅苦しくしたくないので、選ぶ基準とかはあまりないんですけど、自分の中で「若い作り手さんを選ぶ」っていうテーマ設定だけはしています。 今回選ばせてもらったところも、20代から30代が多く働く窯元です。 ダイスのお客さんと沖縄の出会いみたいなところで言うと、「同世代の人が土をこねてこの焼き物を作っている」というのを、知ってもらえたらいいなと思っています。
内容的には今までと同じで、定番の唐草などです。 うちは陽介さんとは逆に、日常で使うような細かいものをセレクトしていく感じですかね。
陽介:住み分けができて、いい感じに並べられそうですね。
奥村:置物として使うものとか、造形っぽいものの入荷がたまたま無くて。 細かいものに絞ったんだけど、逆によかったですね。
あと、ガラス(琉球ガラス)は時期的にも提案したいんだけど、沖縄展のお客さんのことを考えると、もっといろいろな暮らしに向けて選んでもいいなと思って。 『みんげい おくむら』では窓ガラスの再生でつくるクリアに近い淡い「青」が定番で、工房ではもっと深い「青」もつくられてはいるんだけど、僕の暮らしの中には入ってこないので、基本的には選んでないんですよ。 でも、もちろん悪いものではないし、沖縄展のお客さんだったら面白く使う人もいるだろうなと思って、今回は深い「青」もセレクトしてます。
もう1つ、ラムネの瓶の再生の「青」もあるんだけど、これは今ラムネの瓶自体が少なくなってしまったので、もう工房でも定番ではつくってなくて。 それがデットストックである程度集まったので、これも持っていきます。 なので、今回ガラスは3つの「青」を中心に提案するって感じですね。
実は『みんげい おくむら』でも、何となく今年は「青」をしっかりやりたいなと思っていて。 それはガラスだけじゃなくて、染め物とかいろんな「青」があるんだけど。 そんな感じで考えていた時だったから、Aloha Blossomとダイスの「ネイビー」だったり、陽介くんの「青」だったり、偶然なんだけどたまたまシンクロして「いいタイミングだったな」という感じです。
吉田:皆さん色々とお話しありがとうございました。 ZOOMで話すとなんか照れますね(笑)。 そういえば小野崎さん、ウィンドウの話されてましたよね?
小野崎:ダイスのガラスの角のところに「石敢當」のステッカー貼るのどうですかね。 植物で誰も見えないんだけど(笑)。
奥村:それやばいね(笑)。
吉田:やりましょうよ。 カッティングでいいんですよね?
小野崎:いいですか? 俺結構沖縄の「石敢當」好きなんですよね。 沖縄ならではじゃないですか? 角に魔物がいるんでしたっけ? 魔が刺すんでしたっけ?
陽介:「石敢當」を置いて避ける感じですよね?
小野崎:誰も見えないとこに実は「石敢當」のカッティングがしてある感じで。 原担ぎじゃないけど、お守りみたいな。
吉田:めっちゃいいですね。
小野崎:国際通りに行くと「石敢當」って書いてあるTシャツとか売ってありますもんね(笑)。
奥村:あるね(笑)。
一同:(笑)。