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Panama Hat
今年も、愛の込もったパナマハットが、エクアドルから沖縄を経由して、僕たちのもとへと届けられた。太陽のように白く輝くパナマハットが、ずらりと一面に並んで、店の風景も、僕たちの気持ちもすっかり夏仕様だ。
中でも目を引くのが、ブリムの裏にブルーの刺繍の入った4等級のオプティモハット。陽介さんがエクアドル滞在中に出会った民族衣装の刺繍。その美しさに心を奪われ「どうにかその刺繍をパナマハットに落とし込めないか」と刺繍職人に頼み込んで、2年越しに実現した思い入れの深いハットだ。
アンティークのカップから着想を得たというネイティブ調の小花柄は、陽介さんが長年温めていたデザイン。どうしても出てしまう刺繍の裏糸は、ブリムを二枚重ねにして、表から見えないように工夫が施されている。光にかざすとボーダーの織り柄が現れる8等級のハット。これはエクアドルのアスアイ県、その山岳地帯でのみ編まれる「Emelec」という特殊な編み方。1×1の「石目」の編みと、2×2の「あじろ」の編みを交互に繰り返して編むことで、綺麗なボーダー柄に仕上がる。リボンが付いていないのは、手仕事で生まれる織り柄を隠してしまわないように、という作り手の方への敬意の印である。
ひときわ編み目の細かい、20等級のオプティモハットは「ORRS」の定番品。うっとりするほど編み目が細かく、生地はしなやか。その上品な佇まいは、僕たちを最高に贅沢な気分にさせてくれる。ハットの内側、汗止めの部分。ビン皮と呼ばれるこの部分は、今年は全てウォッシャブルレザーが使用されている。そして、ビン皮の裏を覗くと、陽介さん自ら探し当てた、エクアドルの国旗柄のテープがぐるりと一周している。
これは、目に見えないところにこそ拘る、陽介さんらしいもの作りであり、またエクアドルという国、そしてパナマハット製作に携わる全ての人々への、陽介さんからの感謝の証でもあるだろう。
ここでは紹介しきれなかったパナマハットも含め、分かりやすく説明した特集ページを用意しています。そちらで是非、あなたの気に入る最高の贅沢を見つけてください。 -
ORRS 4Dice BLACK DENIM
僕たちは黒が好きだ。
千利休、黒の衝撃、街角のニューヨーカー、黒はいつも強さと共にある。冷静で知的で、何にも染まらない黒。いつだって憧れる色だ。
「ORRS」の服は、愛を感じる服だ。自然を愛し、人を愛し、人の生きた歴史を愛す。受け継いだ歴史と技術、それを引き受けた上に生まれる、新しい美しさ。
では「ORRS」が黒を作ったら、どんなものになるのだろう。いてもたってもいられず、陽介さんに無理を承知でお願いした。
僕たちの思いを受け取ってくれた陽介さん。
しばらくして、陽介さんの考えるブラックデニムが僕たちのもとに届いた。ベースは陽介さんが構想中だった5ポケットのデニムパンツ。ヒップとワタリにゆとりを持たせた、ストンと太めのワイドストレートなシルエット。
生地は、経糸緯糸ともに黒糸を使って織り上げた、12オンスのセルビッチデニムを使用している。前たては、ドーナツボタンのボタンフライ仕様、ウエスト後部にシンチバックを配して、ブラックデニムではほとんど見られない、クラシックなディティールに仕上がった。
後ろ姿が美しく映える、緩やかに弧を描くバックポケットのカーブは、高度な技術が必要な職人の技。クラシックなだけではない、新しい美しさを感じるディティールだ。
そして、ベルトとして使うため、陽介さんの手でひとつひとつ端止めが施された、ナチュラルカラーのコットンロープが付属する。ブラックのアロハからロープをちらりと覗かせて、パナマハットと色合わせ。僕たちの憧れたスタイリングがついに実現した。センセーショナルな黒の魅力と、陽介さんの温かいもの作りが同時に感じられる、まさに理想のブラックデニムとなった。
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ORRS POTTERY
自分が美しいと思うものを信じ、妥協せず追い求める。これが、陽介さんのもの作りに対する変わらない姿勢だ。そして、温故知新の精神。クラシックに敬意を払いつつ、新たな美しさを常に模索する。
パナマハットや、洋服のデザイン、そしてお店の装飾まで、その姿勢は徹底されている。そうやって生み出されるもの達は、どこか懐かしく、驚くほどに新鮮だ。
もちろん「ORRS POTTERY」の陶器も、その姿勢の下に作られている。
「欲しいと思える陶器になかなか出会えず、自分で作ることを考え始めたんです」それは、陽介さんが「ORRS」をオープンさせる2年前のことだった。
自ら作画したデザインを持って、何度も沖縄へ通い、思い描く陶器を製作してもらえる作家さんを探した。その時出会ったのが、本部町で40年以上、藍染めや陶芸を続ける、城間さんだった。
突然訪問した陽介さんの話を、城間さんは快く聞き入れ、陽介さんが思う理想の陶器を製作してもらえることとなった。
その後、陽介さんは沖縄へ移り「ORRS」の店舗探しを始めた。「やっと城間さんの元へも頻繁に通えるようになった」と喜んでいた矢先、城間さんから「脳の病気を患いロクロをひけなくなった」と告げられた。
驚く陽介さんへ、城間さんは「その構想、面白いと思うから自分で製作しなさい」と言い、菊練りや釉薬の作り方など、陶芸の基礎を惜しげもなく教えた。
すぐに、陽介さんは中古の窯とロクロを購入し、城間さんからの教えを実践した。失敗を繰り返し、陶芸の基礎書籍を読みあさり、また実践の日々、ただただ作陶に没頭した。
陶芸には「菊練り3年ロクロ10年」という言葉がある。でも、人が寝ている間も続ければ、菊練りも一年もかからず習得できるかもしれない。ロクロも手の皮がボロボロになるまで続ければ、10年もかからず結果はついてくるだろう。
毎日、そう信じて日付が変わるまで、ひたすら土と戯れ作陶し続けた陽介さん。そんな鍛錬の結果、今では思い通りに考えをかたちに出来るようになったという。
陽介さんはずっと洋服畑で育った、洋服を見続けてきた経験を活かし、そのエッセンスを陶器に込めている。例えば、今では手に入りづらくなった、琉球藍の泥藍を釉薬として使用したブルーのストライプのお皿は、アフリカンインディゴのファブリックからインスピレーションを受けている。また、赤茶色のネイティブ柄が描かれるお皿は、1800年代頃のナバホのラグから着想を得た。その他にも、キャンドルスタンドや照明、オブジェなど、様々なイメージをかたちにして、お皿以外のものも積極的に製作している。
一番の売れ筋である茶碗や取り皿を、一切作らないのは「売るためではなく、自分が欲しいと思うか」その視点を大切にする、陽介さんらしい姿勢が根底にあるからだ。
「売れるから量産。ではなく、多くは作れなくても自分の手でしっかり製作し、手にとる方にちゃんと思いを伝える。これを、これからも続けていきたい」と、最後に陽介さんは語ってくれた。
「ORRS POTTERY」の陶器達は、今回の沖縄展、そして7月頃、2度に分けて届けられます。是非、陽介さんの思いを受け取り、感じてください。