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大丸レシピの「鯖カレー」と ルーティンについて。

大丸レシピの「鯖カレー」と ルーティンについて。

2023.08.07 / INTERVIEW

それは2022年末のこと、OVERCOATの大丸隆平さんにoomaru seisakusho 2のクリスマス会に呼んでいただいた。社員の方々を中心としたインティメートな会で、余興として「シークレットサンタ」形式のプレゼント交換があったのだが、私はなんと、大丸さんご本人のプレゼントが当たるという幸運が! ずっしり重い紙袋の中身は多種多様なスパイスの瓶がぎっしり、なんと「鯖カレー」の材料一式だった。最近、料理に凝っている、という大丸さんに話を聞いた。



市川暁子(以下A):せっかくいただいたのに、まだ作ってないんです、鯖カレー。というのも、レシピの内容を読む限り、私には難しそうで…。材料がかなり細かくグラム表示されていて、驚きました(笑)。自分は料理の時、油とかいつも目分量でしか入れてなくて(苦笑)。

大丸隆平(以下O):そんなに難しくないですよ。大さじ一杯が15gですから。油は5杯弱入れて、マスタードシードを入れて、テンパリングさせて……。

A:テンパリングって何ですか?

O:マスタードシードの香りを油に移すんです。スパイスカレーを作る時は普通の用語なんだけどな……。カレーはインドでは味噌汁みたいなもので、毎日食べるもの。地方によっていろんな味があり、南インドでは魚介類を入れるんですよ、それで鯖を使うカレーもある。ポイントは鯖の臭みをいかにとるか。お酒とお酢に漬けるんですが、漬けすぎるとシメサバになっちゃうので、5分きっかりで。

A:お料理は昔からされてたんですか?

O:ここ2年くらいですかね。ニューヨークって、外食しても味に比べて割高なことも多いから、自分で作ったほうが美味しくできるんじゃないか? と思ったのがきっかけです。最初は緑茶から始まって、次はコーヒー、その後は白米。お米に水を浸透させるのに、20〜30分浸けたのと、丸一日では全然味が違うんです。アメリカで買えるお米でも、長く浸ければ美味しく炊けるんですよ。



A:この間のクリスマス会では、おにぎりの作り方を伝授していただきました。本当に美味しかったです!

O:おにぎりってぎゅうぎゅう握ったのじゃなくて、口に入れた時、ほろっとお米がほどける感じのほうが美味しいと思うんですよ。お寿司もそうかと思うんですが。って、なんか偉そうに言っていて、間違っているかもしれないですけど(笑)。

A:いえいえ、大丸さんのお料理美味しいですし。お料理の仕方や感じ方って、自由だと思います。



忙しいときほど、
自分を整えるルーティンが大事

O:料理って集中しないとできない。やるなら片手間じゃなくて真剣にやりたいから。毎日大体1時間以上はかけて晩御飯を作る中で、自分の頭がリセットされるんです。

A:最終的に成果物として美味しいご飯ができて家族とシェアできるというのもいいですね。

O:忙しければ忙しいほど、大事な時間ですね。自分を整えるルーティンというか。
朝は30分くらい将棋をやっています。オンラインで対局して、その後、感想戦(対局後に一部始終を見直すこと)もやって。将棋も真剣に考えないと負けちゃうから、その集中する時間が心地よいですね。朝、瞑想するのと似ているかもしれません。

A:一日が豊かですね。忙しかったとしても、きちんとゆとりがある。

O:料理でも将棋でも、意識的に集中する時間を作っていますね。そうやってルーティン化するのが好きなのかも。服づくりの場合も、毎日コツコツやっている中で、だんだんオリジナリティが出てくる。プロの世界はそこが大事で、最終的には独創性がないとダメです。料理や将棋は僕の場合はまだメディテーションみたいなレベルで独創性はない。

カレーのスパイスの意味とか将棋のいろんな手筋とか、プロだったら極めていく部分はたくさんあると思うんです。この間の羽生(善治)さんと(藤井)聡太くんの対局はすごかったですね。羽生さんの戦法はありえないくらいかっこよかったなあ。洋服でいえば、右と左の袖を逆につけちゃうくらい前代未聞だったんですよ。



A:例えば将棋だと勝つ、ということをゴールに駒を進めていくと思うのですが、毎日将棋を指していることで、勝つためのビジネス的思考が訓練される、というようなことはあったりするんでしょうか?

O:将棋もビジネスも相手ありき、ですよね。将棋は心理戦でもありますし、論理的に進めていくというプロセスも大事です。9×9のマス目の中での駒の動き方は、それこそ天文学的な数字ながらも上限がある。制限がある中でいかにクリエーティブであるか、という思考法はビジネスにも生かされているような気はしますね。

A:お料理についてはいかがですか?

O:料理はカレーの隠し味に梅干しを入れた、というところくらいが僕のアイディアです。やっぱり期待を超えていくのがプロの仕事と思いますから、料理はまだまだですね(笑)。

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